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    第24回吉田秀和賞 受賞作品決定

    優れた芸術評論に対し賞を贈呈する「第24回 吉田秀和賞」に、通崎睦美 『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』(講談社 2013年9月刊)が選ばれました。
    【選評】

    これはすぐれた「伝」である。人として何ひとつ欠けるところのない姿で、1907年生まれの平岡養一というひとりの音楽家が一から始めた生涯を、1967年生まれの通崎睦美が向こう岸までわたりおえた。彼女もまたひとりの音楽家として、伝記作者がしばしば陥りがちな予知、先取りを充分に警戒しながら、六十歳年長の平岡養一のあとを追う。彼女が十歳のとき、日本各地巡歴の記念演奏会で京都にきた平岡養一は、木琴を習っているこの少女を舞台に引き上げ、「チャールダシュ」を少女と協奏。そして固い握手と励ましの声。「平岡が次世代に託そうとしたのは、木琴という楽器だけではなく、それを弾く心そのものだったのではないだろうか。私は、平岡の人生をたどってみて、そのことに気付かされた」と通崎は本書の「むすび」にいたって打明ける。前後照応というすぐれた「伝」の生まれた遠因、そしてのちに平岡養一愛用の「ディーガン・アーティスト・スペシャル・ザイロフォンNo.266」が遺族によって通崎睦美の常用楽器になるのも、同じ遠因の働きである。人生と音楽。音楽と人生。この二重奏の永遠性。
    杉本秀太郎


    日本人は手先が器用。小回りが利く。機動性に富む。そんなイメージにピッタリなのが木琴だ。ピアノなら腕力。声楽や管楽器なら肺活量。西洋人に太刀打ちするのは容易ではない。しかし木琴は違う。牛若丸は弁慶に勝つ。その論理が通る楽器だ。事実、戦間期のアメリカに木琴の日本人スターが誕生した。平岡養一である。近代日本から真っ先に登場した、世界に通用する西洋クラシック音楽家のひとり。山田耕筰や近衛秀麿や三浦環と並べられて然るべき人だ。本書は彼のことを書き尽くす。詳細な伝記的事実から演奏スタイルの適確な分析まで。周囲への目配りも十分に。貴重な原資料もたっぷり用いて。「同業者」ならではの温かく時に厳しい批評も伴って。立派な評伝だ。日本近代音楽史を語るうえで避けて通れぬ一冊である。
    片山杜秀


    【受賞者プロフィール】
    通崎 睦美 (つうざき・むつみ)
    1967年京都市生まれ。京都市立芸術大学大学院音楽研究科修了。常に作曲や編曲の委嘱を活発に行い、独自のレパートリーを開拓。ピアノ、ヴァイオリン、アコーディオン、箏、リコーダーを始めとする様々な楽器やダンスとのデュオ、マリンバ・トリオ、室内楽やオーケストラとの共演など、多様な形態で演奏活動を行っている。また、2005年2月、東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会(指揮/井上道義)で、木琴の巨匠・平岡養一氏が初演した紙恭輔「木琴協奏曲」(1944)を演奏。それをきっかけに、平岡の愛器と約600点にのぼる楽譜やマレットを譲り受けた。以後、演奏・執筆活動を通じて木琴の復権に力を注いでいる。一方、2000年頃よりアンティーク着物の着こなしが話題となり、コレクションやライフスタイルが様々なメディアで紹介されている。
    CDに「MUTSUMI〜Songs from asia」「M×PIAZZOLLA」(イーストワークスエンタティンメント)、「届くことのない12通の手紙」「1935」(コジマ録音)、「スパイと踊子」(マイスターミュージック)。
    著書に『天使突抜一丁目〜着物と自転車と』『通崎好み』『天使突抜367』(淡交社)、『ソデカガミ〜銘仙着物コレクション』(PHP研究所)。

    <吉田秀和賞について>
    音楽・演劇・美術などの各分野における優れた芸術評論に対して賞を贈呈し、芸術文化を振興することを目的として1990年に創設されました。賞の設立から21年の間、審査委員長を務めていただいた吉田秀和氏は、2012年5月22日に急逝致しましたが、第22回目からは、審査委員長に生前吉田氏と親交のあった文学者・杉本秀太郎氏を、また同年1月に逝去された作曲家・林光審査委員の後任として音楽評論家・片山杜秀氏(第18回受賞者)を迎えました。
    吉田秀和賞についての詳細、過去の受賞作品などは、こちらからご覧いただけます。
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