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2013/06/09(Sun) 14:56:43
【児玉桃/ドビュッシーをとりまくピアノ音楽】 最終回のプログラム
20世紀の扉を開いたとも言えるドビュッシーの音楽は、メシアンや武満徹によって受け継がれ、彼らがまた独自の響きを生み出す原動力にもなりました。そのような大きな流れがコンサートでもよくわかるように、初めにドビュッシー〈前奏曲集 第2巻〉(前半の6曲)を演奏、メシアン、武満と続き、最後にまたドビュッシー〈前奏曲集 第2巻〉(後半の6曲)が戻ってくる、という順番にしました。ドビュッシーの音楽が持つ現代性を、心ゆくまでお楽しみいただければ幸いです。

ドビュッシー
〈前奏曲集 第2巻〉

昨年11月のシリーズ第2回「ドビュッシーとショパン」では〈第1巻〉が演奏されましたが、今回はその3年後(1913年)に完成された〈第2巻〉。〈第1巻〉では通常の2段譜が使われていましたが、〈第2巻〉は3段譜で書かれており、それだけ様々な旋律、音色、リズムが入り組んだ精妙な作品に仕上げられています。第12曲〈花火〉はとりわけ有名で、この曲だけ単独で演奏されることも多々あります。

メシアン
〈8つの前奏曲〉 から
〈みどり児イエスにそそぐ20の眼差し〉 から

〈8つの前奏曲〉はメシアン21歳の1929年に作曲されました。第1曲〈鳩〉、第8曲〈風に映る影〉などが演奏されますが、その題名からも、フランスの偉大な先輩の影響が感じられます。
〈みどり児イエスにそそぐ20の眼差し〉は1944年の作品。ここに至ってメシアンはまったく独自の響きをつくりだすことに成功しました。演奏されるのは、第4曲〈聖母の眼差し〉、第10曲〈喜びの聖霊の眼差し〉の2曲。この曲には、児玉桃さんの素晴らしいCD(全20曲収録)があります。ぜひ聴いてみてください。

武満徹
〈リタニ ―マイケル・ヴァイナーの追憶に―〉
〈雨の樹 素描〉

「武満徹の〈二つのレント〉は音楽以前である」という有名な(?)批評で知られる〈二つのレント〉(1950年作曲、楽譜消失)を、後年の武満が若干残されたスケッチと記憶を頼りに再作曲したのが〈リタニ〉(1989年)です。吉田秀和初代館長は、初演時の〈二つのレント〉について、「ややフランス印象派風の音の装いの中で、孤独狷介で人を寄せつけない厳しさをもった音楽」と評しています。
〈雨の樹 素描〉は1982年、大江健三郎の小説『頭のいい「雨の木」』に触発されて作曲。打楽器のための〈雨の樹〉(1981年)、ピアノのための〈雨の樹 素描 II〉(1992年)と“血縁関係”にある曲です。曲に広がる水のイメージの中に、はるかドビュッシーの響きも聴こえてきそうです。

《関根》(『vivo』2013年6月号より)
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